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2014-09-07 [研修報告]

人生は物語の宝庫である。
その宝箱を作家に覗かせるのではなく、自らを客観視しながら自分で覗いてみるのも、
人生というものをさらに豊かにする一つの方法なのかも知れない(あとがきより)。

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コスモスの影にはいつも誰かが隠れている (河出文庫)

コスモスの影にはいつも誰かが隠れている (河出文庫)

  • 作者: 藤原 新也
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫



この作品は、とある人々の生活に起こった事象を紡いだ14編の小説からなる。
小説というより、作者によって幾ばくかの彩りを添えられたノンフィクションというべきか。
しかし、その点を詮索することには、あまり重要な意味はないように思われる。

登場するのは、特別な存在ではなく、ごく一般の、市井の人々である。
その人々が直面する、出会い、そして別れが淡々と描かれている。
いや、むしろ僕自身の感覚では、「別れ」に重きがおかれているような気がする。

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かつて、井上靖の作品で次のような短編を読んだことがある。
幼い主人公が川で手を洗っていた際、ふとした拍子に石けんを川に流してしまう。
作者は、そのときの感情を「完全に物を喪った『喪失感』」と表している。

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それまで、藤原新也の作品を数々読んできたが(東京漂流など)、この作品を読了して
喪失感という言葉が真っ先に浮かんだ。
今まで、当然のように存在していたものを失ったときの、空虚なあの気持ち。

しかし、同時に、現在の自分自身を見つめ直すことの大切さにも、改めて気付かされた。
当たり前のように存在しているものは、実は奇跡の連続の結果なのだと。
そうしたものの意義を再確認することこそ、自らの人生の宝箱を覗くことにほかならないと思う。



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